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合同会社HAYAKUMO

VUメーターで作られた音楽を通じて世界に感動を広める

―― 早雲健悟 様 ――

ニーズを満たす「評価される製品」日本製のこだわりと品質

――HAYAKUMO様がどのような会社か教えてください。

早雲:弊社は、音楽アーティストやクリエイターの方々が自身の活動を円滑に進められるよう、その人たちをサポートすることに焦点を当てた会社です。

 その中の一つが、モノづくりですね。VUメーターやパッシブモニターコントローラーなどがあります。電源不要のモニターコントローラーで、VUメーターと同様、日本製のロータリースイッチを使用しています。Made in Japanの製品を作ることに力を入れ、市場全体を狙うよりも、ニーズを適切に把握して外観や機能を重視した‟評価される製品”を提供しています。また、海外ブランドの音響機器も取り扱っておりまして、日本国内での輸入代理店業務も行っています。

――幅広く展開されているんですね。 

早雲:ええ。最近は様々なことにもチャレンジしています。

――と、言いますと。

早雲:新型コロナウイルスの影響が長かったじゃないですか。ネット上にはClubhouseなど会話が可能なプラットフォームなどが提供され、そこにアーティストやフリーランスの方々が集まりましたが、やはりネットだけでは物足りないと感じる人が多かったんです。特にクリエイターは外での交流や刺激が不可欠なんですよ。このような環境が3年以上続いており、深刻な問題だと感じていました。そのため、東京都心部に広々としたクリエイター向けのスペースを提供することも行っています。

――そのようなスペースでどのような催しが開催されているのでしょうか。

早雲:最近ですと、東京の日本橋でミューラルアート(壁画)を公開しました。このような取り組みによって、クリエイター達の境界線がボーダーレスになり、様々なジャンルから人が集まって新たなコミュニケーションが生まれました。そういった場所を提供できたのは嬉しいですね。

――早雲さんはどのような経緯で事業をスタートさせたのかお聞かせください。

早雲:初めは音響機器メーカーに入社しました。その会社は、「こんなものがあれば嬉しいな」といった要望に応じて製品を作ってくれるユニークな会社でした。何でも手がけ、販売および修理も行う、お客様の声をダイレクトに反映できていました。

――営業における理想の形ですね。お客様に寄り添い、その声を製品にしていく、我々も是非見習いたいです。

早雲:そこから自分ならこういう音響機器が作りたいなといった想いもありましたので、お世話になっていた方と協力して起業しました。独立は2016年で、法人化は2019年ですので、5年が経過しております。

偶然は必然の始まり

――扶桑計測器とのお取引が始まったきっかけを教えて下さい。

早雲:そのお世話になっていた方と扶桑計測器さんの技術者さんがたまたま知り合いだったのです。

♦「どのようなお仕事をされているのですか?」
⋄「起業中でステレオのVUメーター作ろうと思って探している最中です」
♦「え?私はアナログメーターを作っていますよ!」といった嘘みたいな偶然です(笑)

――まさに、人脈の話に繋がりますね。BTS規格(放送機材に対し明確な独自の基準)のVUメーターを製造しているのは弊社だけだと思います。BTSというのは、『BTS 5703(VU計)』という形で始めたもので、その後JIS規格の『JIS C 1504(VUメーター)』というものに統合されていきました(現在はJIS規格も廃止)。弊社のVUメーターはこのBTS規格に基づき、動作特性と電気特性が厳密に規定されているのが特徴になります。300msでメモリの0VUを厳密に示すことができるんです。とにかく、ものすごくニッチなセグメント製品なので、ほんと、めぐりあわせとしかいいようがありませんね(笑)

安心のビジュアルガイド、デジタル時代でも大事なアナログ

――音楽アーティストさんはどのようにVUメーターを使用しているのでしょうか。

早雲:例えると、家を建てるときの物差しのようなものですね。家は土地を買うことから始まりますが、土地以上に家は絶対に大きくなりませんよね。音楽も同じでサイズには限界があります。限られた中で建物を設計する際には、物差しが必要であり、その役割を果たすのがVUメーターです。ボーカルやドラムの音のバランスなどをVUメーターが可視化して教えてくれます。

――VUメーターに表示される範囲の中で音楽を作り込んでいくみたいな感じですか。

早雲:そういうことです。PCの普及により簡単に楽曲を制作する事が可能になりましたが、ほとんどの方はまずピークメーターを見て作業をされていると思います。ピークメーターはピークを見ることができますが、音量感は確認しにくいです。そのため、瞬間的な音は大きいのですが、実際に販売されている楽曲と比較すると、なんとなく物足らない印象になってしまう事があります。このような問題が曲作りにおいて、非常に重要なポイントですね。そこを改善できるのがVUメーターなんですよ。

 VUメーターは‟こういうふうに振れておけば大丈夫”と視覚的に分かりやすく見れます。車も殆どがデジタル化されているにもかかわらず、アナログメーターがあるじゃないですか。あれは、人間の感覚に直感的に訴えるからです。

――今のお話をお聞きすると、音楽業界において、アナログのニーズはなくならないという印象を受けます。

早雲:若くて有名なアーティストであっても、VUメーターを知らない方もいらっしゃいます。興味を持ってくださった方にデモ機を貸し出すと‟絶対スタジオにあった方がいい”と感動のメッセージを頂きますね。感覚だけでなく、確かな視覚的根拠があることは、アーティストにとっては非常に大切だと考えます。

――なるほど。VUメーターが音楽制作や作曲に携わる方々に必要とされることは理解したのですが、音楽のジャンルは固定されるのでしょうか。

早雲:いえ、ロックやジャズ、クラシック、ヒップホップ、ダンスミュージックなどジャンルは問いません。VUメーターがなくても曲は作れますが、あると絶対に便利だと思います。そういう意味でも、成長性があると思いますね。周囲で使用している人がいて、見ればおのずと導入したくなります。ちなみに、VUメーターを見ながら音楽を聴いたことはありますか?

――ないですね。

早雲:是非、聴いてもらいたいですね。非常に多くの発見があるんですよ。名曲とされる楽曲を聴いてみると、様々な発見があります。良い曲を聴くと、すごく針が振れて、踊っているように動くんですよ。大きいボリュームなのに音に隙間があったり、巧みに音の行間が隠されていることが感じられます。このような聴き方だけでも楽しいですよ。

――弊社のお客様で高級オーディオ機器にVUメーターを採用されている会社さんもあります。機会があったら好きな曲で聴いてみたいですね。

売りは扶桑さんの優れたメーターと拘ったデザインの融合です

――VUモニターの市場について考えると、恐らく御社以外に、何社か企業が存在するかと思われますが、HAYAKUMOさんのVUモニターの魅力はなんでしょうか。

早雲:アピールポイントは、当然のことながらメーターです。扶桑計測器様の優れた製品を使用していることは本当に欠かせません。あとは計測器だと思って販売してないんですよ。計測器であれば、この両端の木材は不要ですよね。良質な製品として成り立たせるためには、デザインも含めてしっかりとしたものにする必要があります。

 例えば、家に真四角で無機質なVUメーターがあるだけでは、それだけで浮いてしまいますよね。見た目だけでなく、感度の高いアーティストやプロデューサーが、まず見た目だけで家やスタジオに置きたいと思って頂けるように、適切な木材を使ったり、サイズもコンパクトにして、工夫を凝らしています。

――飾り物として綺麗なものだったら、部屋に置きたいです。

早雲:ええ。そこがプライベートビルダー様と弊社との違いだと考えています。汎用のケースにメーターを取り付けて販売することは、一定の知識があれば誰でもできます。

 弊社はデザインにもこだわり、シルクも入れて、しっかりと量産しています。そこが差別化の要素ですね。木材の大枠の加工は、私の地元である京都で行い、細かい仕上げ作業は自ら行っています。 左右で色調や木目が全く一致せず、使用できないものもあって大変なのですが、そこはこだわりだと思っています。

――お話をお聞きすると、国内だけでなく、海外市場にもものすごくチャンスがあるように感じました。先程お話させて頂いた高級オーディオのメーカーさんも今では国内向けより海外向けの方が多いそうです。特に海外の富裕層の方が挙って購入されるそうです。

早雲:そうですね。デザイン、Japan品質、高技能を持つ職人が作るBTS準拠のVUメーターとアピールできる点がたくさんありますので、海外向けはチャンスが大きいと思っており、力を入れ始めているのですが、中々人手が足りないというところもあります。

――海外のVUメーターでいいますと、イギリスのSifam(サイファム)社が有名ですが、是非、弊社のVUメーターも海外でアピールしてください。また、弊社はモノづくりの総合企業である藤田電機グループに属していますので、プレス・切削・めっき・組立といった領域で、お困りごとがあれば是非ご相談下さい。

早雲:それは頼もしいですね。ぜひお願いします。それと‟HAYAKUMOロゴ”と‟扶桑計測器ロゴ”をVUメーターに入れてアピールしたりしても面白いかもしれませんね。

――良いですね。最近、小ロットで版を作成する費用がもったいない、試作で数枚試しに作ってみたいといった時に便利なスケール板の印刷用に専用プリンターを導入したので、早速試作してみましょう!

メーターは「職人技の極意」と呼ぶに相応しい逸品ですね

――今後の扶桑計測器に期待することはありますか。

早雲:音響機器は細かい要望が非常に多く、それをいつも真摯に対応して頂いているのは非常に感謝しております。売ったら売りっぱなしという会社さんもいる中で、お客様が抱える問題にしっかりとフォーカスを当て、取り組む姿勢は素晴らしく、頼もしさを感じます。

――ありがとうございます。お客様と一緒になり、よいものを作り上げたい、お客様のお困りごとを解決したいといつも考えています。

早雲:アナログメーター作りをやめないで欲しいです。それに尽きます(笑)

――昨今、事業承継の問題や作業者の技能継承の問題からアナログメーターを作る企業が廃業されるケースが増えているのですが、そういった中でお客様からはよく「やめないで」と言われます。

早雲:私も作業風景を見せていただいたことがあるのですが、アナログメーターは微細なはんだ付け技術、感覚が求められる手作業といった職人技が必要な、まさにすり合わせの典型といった製品ですよね。対局となるスマホ、テレビといったモジュール製品のように、明日からきて、すぐ作ってくださいとは中々いきませんよね。

――はい。ですので、技能者の技術継承が難しいという課題があります。そういった中でも、弊社はベテラン作業者から若い技術者への技能継承も積極的に行っており、会社が存続する限り、アナログメーターは続けたいと思っています。

早雲:非常に頼もしいお言葉を頂きました。是非、今後ともよろしくお願いします。

――こちらこそ、本日はありがとうございました。

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