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株式会社ジュピターコーポレーション

日本のメーター技術、世界が気付く舞台へ支援

―― 左:梶川知義 様 / 右:中宮康 様 ――

自己の人間性や品格を向上させ、社会貢献を通じて成長していきたい

――ジュピター様のビジネスについて、詳細をお聞かせいただけますでしょうか。

中宮:弊社は1948年に創立し、資源の乏しいわが国の再建に貿易で貢献しようという「まごころ」からはじまりました。現在は輸入をメインにしています。今では売り上げの約8割が宇宙・航空・防衛産業ですね。どうしても輸入が中心になっているので、今後は輸出を強化していきたいと考えています。日本には御社のアナログメーター・ムーブメントのようにきらりと光る中小企業がたくさんあると思いますし、そういった企業様は海外販売のリソースが十分でない場合、お力添えができないかと考えています。

 弊社は千葉県の富津にも工場がございまして、今後はこの工場を活用し、付加価値の向上に努めたいと考えております。220名の社員のうち80名が富津工場に在籍しており、御社のような製造業様との連携が実現できれば嬉しいですね。

――扶桑計測器も中小企業ですが、やはり海外ビジネスのノウハウというか、経験はどうしても少ないです。今はGoogle翻訳、最近ですとChatGPTなどが出てきて、文章の読み書きはある程度できるようになりましたが、海外の商習慣、対面での会話、貿易手続き等々はどうしても足りない部分があります。それだけに、御社の価値が活かせるチャンスは大きいのではないかと感じます。

――御社名”ジュピターコーポレーション”の「JUPITOR」は木星のことですか。 

中宮:「JUPITER」とは古代ローマ神話の神で、天体の「木星」を表します。創始者の藤村義朗が会社を設立する際、海外の友人達から贈られた社名です。神話の崇敬の念に基づき社名のスペリングを1文字変えて「JUPITOR CORPORATION」となりました。

――素敵な経緯ですね。藤村義朗様は海軍武官だったそうですね。

中宮:創立者・藤村義朗は第二次世界大戦当時、ドイツのベルリンの日本大使館に海軍駐在武官補佐官として勤務しており、戦争の早期解決を願い対米和平工作に身を投じておりました。藤村義朗は、国家のために尽くすという信念が根底にあり、自己の人間性や品格を向上させ、社会貢献を通じて成長していくことへの強い熱意をお持ちでした。

 この考え方が弊社の基本であり、お客様のお役に立てるよう心掛けております。ですから、我々がアメリカに行くときは、その地域にどう貢献できるか、日本においても同様に地域や国に対して果たせる使命について考えること、そして我々の仕事が果たすべき役割を常に念頭において、日本国民の役に立つよう、その概念をしっかりと持って行動することが、ジュピタースピリットだと考えています。

――弊社でも昭和36年より「信頼」「実行」「和」の社訓を制定しています。原理原則に基づいて基本に忠実な行動を取ることが大事ですね。

手回し式絶縁抵抗計は時代を先取りしていましたね

――梶川さんには、長年にわたり海外でのアナログメーター販売にご尽力いただいております。改めて、アナログメーターを販売されている国や分野についてお聞かせいただけますか。

梶川:はい。アナログメーターと、その心臓部であるムーブメント(内機)を海外に販売しており、北米、ヨーロッパを中心としたお客様からのご注文をいただいております。品質を重視される方々に好評で、民間航空機、トラック関連、特殊車両にも採用されていますね。

 北米では特殊車両のスピードメーターやタコメーター、航空機用のインジケータに使用されています。ヨーロッパでは、高い精度が求められる計測器や配電盤などに使用されています。これらの機器が信頼性の高い御社から供給されており、現在もほとんど故障が発生せず、本当に感謝しております。 海外で販売する際、不具合が起こるのが一番困るですよ。現地で修理するわけにもいかないですし、そのときはいつも御社に不具合症状をお伝えすると、輸送中なのかお客様の使い方だとか原因がはっきり分かるのが凄いと思います。これも御社の品質保証、梱包やQC活動も含めて意識が高いのが非常によく分かりますね。

――ありがとうございます。改めて、弊社とのお取引が始まったきっかけについて、お伺いできますでしょうか。

梶川:以前、海外向けの測定器を販売していた会社さんが廃業されることになり、2005年頃に引き継ぎました。その中の製品群に扶桑計測器さんのアイテムが数点入っていたのがはじまりですね。

――それが手回し式の絶縁抵抗計ですね。この機種は米国の大手計測器メーカー向けのOEM機種になり、長年ご愛顧頂いておりました製品になります。

梶川:当時の扶桑計測器の社長さんに色々と教えていただきました。このハンドルを回すと蓄電が出来るので電源が不要で便利だよと。今覚えばかなり時代を先取りしていた測定器ですよね。

――そういえば、2016年に梶川さんとこちらの計測器メーカーさんのシアトル本社を訪問しましたね。計測器のトップメーカーで、その本社の広さ・洗練度合いに圧倒されました。余談ですが、ダウンタウンでAmazonの本社を見て感動したことも覚えています。アメリカはスケールが大きいですね。

梶川:お客様との話で覚えているのは、手回し式絶縁抵抗計は徐々に販売数は減っており、ニッチなセグメントにはあるが、電池が不要ということで、電池を常時用意することが難しいような場所でのニーズが一定数残っているということでした。当時、手回し式絶縁抵抗計を作っているのは世界中でも恐らく扶桑計測器さんしかなかったので、まさに残存者利益というものなのかなと感じましたね。

――確かにこの製品は特に国土が広いアメリカの他に、砂漠が多い中東地域でかなりご愛顧頂いておりました。砂漠では電池の保管に限度があるので、理にかなっているなと思いましたが、残念ながらこちらの製品は2018年に販売終了となってしまいました。

梶川:この製品は作るのが難しいんですよね。

――おっしゃる通りです。元々、製造が難しいアナログメーターの製造の中でも特に難度が高い機種でした。通常はアナログメーターやムーブメントの中心に四角いコイルの枠があり、そこに巻線をしていくのですが、この巻線がリガメントという技術で渦巻のように巻いてはんだ付けをするんです。全て手作業になりますが、この渦のバランスを取りながら巻いていく作業が非常に難しく、高度な技術でその職人さんがご高齢でこれ以上作ることができないというのが理由なんです。

中宮:後継者の育成は考えられたのですか?

――ええ、高技能作業者を養成しようと試みましたが、難しかったのが現状です。弊社の作業者は皆レベルが非常に高く、微細なはんだ付け作業、細かい部品の組み立て作業といったものが非常に得意で、そこが強みではあるのですが、その一級作業者をもってしても難しいといったレベルでした。

梶川:日本のものづくりの凄さを改めて感じるお話です。

――時代が進むにつれて製品の需要が年々減ってきていたこと、ロングセラー製品となった一方で製品デザインが今の時代に合うものではなくなってしまったこと。かといって、新規に金型に投資しても、ニッチすぎて採算が合わないだろうといった複数の要因で、最終的に生産終了という意思決定をするに至りました。

中宮:後継者問題と共に技術継承には時間と労力が必要ですからね。

アナログメーターを使用しているのは明確な理由があります

――ジュピターさんが考えるアナログメーターの利点などについて、ご意見をお聞かせいただけますでしょうか。

中宮:デジタルの場合、一目で理解できることが重要です。飛行機には必ずアナログメーターが付いていますよね。そういう意味では、人間の感覚に最も適している部分があると思います。デジタルに変えられないことはないでしょうが、数字ではなく見た瞬間の感覚にフィットしているんでしょうね。

梶川:オートパイロットまで導入している組織が、いまだにアナログメーターを使用しているということは、明確な理由があると考えられます。また、御社の製品は0調からの伸びも均一で、リニアな直線性を備えているので計測器に適していると感じています。

――アナログメーター事業におけるビジョンをどのようにお持ちか、教えていただけますか。

梶川:製造者の統合の影響で、イギリスやアメリカもアナログメーターの製造が困難になっています。御社が唯一のサプライヤーとして続く限り、限られた市場になるかもしれませんがその価値を守りながら、維持できる可能性があります。新規参入が簡単ではありませんから、製造者の立場から言うと市場参入の障壁が比較的低く、好都合かもしれませんね。

――外国のマーケットは、もう少し掘り下げる余地があると思います。

梶川:ええ、やはり先進国の市場の方が御社の価値を感じていただけるでしょう。品質を重視し、その品質に価格を込めた信頼性を持つことで、お客様に訴求できる形が良いと思います。

中宮:新型コロナウイルスの影響で3年以上も活動が停滞していた状況から、最近は状況が改善されてきているので、移動しやすくなりました。そろそろ活動を再開しなければなりません。今年は是非米国に出張して、拡販したいですね。

――前回出張時は円高という状況もあり、価格の壁がありましたが、昨今は円安ということもあり、チャンスがあるのではないかと思っています。また、前回出張は確かコロナ前の2019年頃で、あれから4~5年たつと米国のお客様の状況も変わってきているかもしれません。当時、アメリカのメインとなる産業用途のメーターは価格最優先といった印象ですが、今アメリカではインフレが進み、物価も高くなっているはずです。

梶川:そうですね。モノづくりの企業でも、材料費・人件費・光熱費・物流費等々あらゆる要因でここ2~3年で材料・部品の価格があがりました。これはアメリカでも一緒なはずです。円安の恩恵をうければ、今ならいけるのではないかという気もしています。

中宮:ちなみに、扶桑計測器さんの今のラインナップはどのような製品があるのでしょうか。

――VUメーターや一般産業向けのパネルメーターに加えて、鉄道信号計ですね。線路の点検時に、線路のノイズを測定するんです。そのノイズはかなり微細で、鉄道信号計はこの分野に特化しており、微細な鉄道ノイズも計測できるという特徴があります。その他、特徴的な製品としては、放送局向けに高周波電流計も展開しています。こちらはラジオ放送局では必ず必要なもので、やはり日本で製造している会社は弊社ともう1社くらいしかありません。

梶川:それは面白そうですね。早速、海外需要調査をします。

――御社は積極的に海外のお客様に当社製品を紹介して頂けるので、助かります。先日も先程話にでた米国の大手計測器メーカーに、手回し式絶縁抵抗計で一旦取引は切れてしまいましたが、当社光学部門のシャッター製品の紹介を頂き、先方のサーマルカメラの新製品用に検討して頂ける流れができましたね。是非こちらの案件も頑張りましょう。本日は貴重なお話ありがとうございました。

中宮・梶川:こちらこそ、ありがとうございました。




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https://www.jupitor.co.jp/