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2024.04.01

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アナログメーター(電気計測器)の分類

 前回の記事でアナログメーターの基礎に触れましたが、今回はその動作原理と特徴に深く潜り込みたいと思います。電気計測器としてのアナログメーターは、その精度、信頼性、そして多様性から現在でも広く利用されています。ここでは、主要な動作原理に基づく分類と、それぞれの原理がどのような特色を持ち、どのような用途に適しているのかを詳しく見ていきましょう。

■動作原理による分類
1.可動コイル型計器
可動コイル型は、アナログメーターの中でも特に一般的で、精度が高く信頼性のある計測を実現します。この計器は、磁石と可動コイルの相互作用によって動作します。電流を流すことでコイルに発生する電磁力がトルクを生み出し、針を動かして測定値を指示します。主に直流電流の測定に用いられ、交流には対応していませんが、交流を直流に変換することで、間接的に交流の測定も可能です。このタイプの計器は、電流や電圧の測定だけでなく、様々な物理量を電気信号に変換して測定する多くの応用分野で使用されています。

2.可動鉄片型計器
可動鉄片型計器は、固定コイルに流れる電流によって生じる磁界が、可動鉄片に作用する電磁力を利用します。この原理により、主に交流電流や電圧の測定に適用されます。構造が堅牢で、原理的には直流でも動作可能ですが、実際の直流測定への使用はヒステリシス効果による誤差のため、限定的です。

3.電流力計型計器
電流力計型計器は、固定コイルと可動コイルの両方に電流を流した際に、その瞬時値の積に比例する力を利用します。このタイプは、携帯用や配電盤用計器として特に重宝され、電流計に多く用いられています。その構造から、比較的幅広いアプリケーションに対応可能です。

4.整流型計器
整流型計器は、交流を直流に変換する整流器を内蔵した可動コイル型計器です。交流の平均値を測定する原理に基づいており、波形による誤差が生じる可能性がありますが、感度が高く、入力に対してほぼ直線的な応答を示します。これは交流計器の中で最も高感度であり、多くの精密測定に利用されています。

5.熱電型計器
熱電型計器は、電流の発熱効果を利用し、交流の実効値を非常に忠実に示します。特に、高周波数帯での電流測定に適しており、放送用途などで広く使用されています。熱電型は、その高周波特性の良さから、特定の応用分野で重宝されています。

■アナログメーター(電気計測器)の許容差による分類
JISでは標準試験で計器のメモリを試験した時の誤差の限度を許容差といい、この許容差によってアナログメーター(電気計測器)を0.2級、0.5級、1.0級、1.5級及び2.5級の5段階に分けています。一般的に、この許容差が低いほど、アナログメーター(電気計測器)の製作難度が上がるため、低いほど製品の価格は高価になります。

0.2級:副標準機として使用できる確度と構造をもつもの
0.5級:精密測定に使用できる確度と口構造をもつもの
1.0級:0.5級に次ぐ確度と構造をもつもの
1.5級:工業用の普通測定に使用できる確度と構造をもつもの
2.5級:確度に重きを置かない場合に使用される

■アナログメーター(電気計測器)の用途による分類
アナログメーター(電気計測器)には構造と正確さによって次の4種類があります。

1.標準用または据え置き用計器
これは最も正確さの良い計器で、電流・電圧及び電力の精密測定や他の一般計器の校正のための標準器として使用されます。

2.携帯用計器
これは階級0.5ないし1.0級の正確さのもので、実験室や工場現場などで使用されます。携帯に便利な構造・形状になっています。

3.配電盤用計器・パネル用計器(パネルメーター)
配電盤用計器は1.5級ないし2.5級の正確さで主に電力機器の配電盤用に取り付けられて、電力の色々な量を指示させるものです。
パネル用計器は配電盤用と同程度の正確さで測定器のパネル等に取り付けて使用する比較的小型の計器です。サイズは弱電関係に多く使用されるので、数十Aまたは数百V以上の大電流、高電圧を測ることはめったにありません。
これらは90°振れ角の狭角メーターと250°振れ角の広角メーターに分類されます。狭角メーターは縦横60mm、80mm、100mmの正方形サイズのものが多く使用されます。広角メーターは縦横80mm、110mmの正方形サイズのものが多く使用されています。

上記の通り、アナログメーター(電気計測器)は、その用途に応じて標準用、携帯用、配電盤用、パネル用といったカテゴリーに分類されます。標準用は最も高い精度を持つ計器で、精密測定や他計器の校正に用いられます。携帯用は実験室や現場での使用に便利な構造をしており、配電盤用やパネル用は主に電力設備で見られ、比較的低い精度で広範な測定に使用されます。
 アナログメーターはその多様な動作原理により、幅広い測定ニーズに応える柔軟性を持ち合わせています。それぞれの原理は特定の用途に最適化されており、正確で信頼性の高い測定を可能にしています。技術の進歩と共に、これらの古典的な計測器も進化し続け、現代の電気計測技術の基盤として不可欠な役割を果たしています。

扶桑計測器では、主に可動コイル型計器と整流型計器を製造しています。前者は、各種産業用途や船舶向けのパネルメーター、後者は、BTS規格に準拠した放送局向けおよび音響機器用のVUメーター、そして鉄道信号の保守点検に必要な鉄道信号計といった品目に採用されています。又、放送局で必須とされる高周波電流計にも使用されています。
特に高周波電流計に関しては、当社独自の設計・製造技術に基づくノウハウを有しており、日本でこの製品を提供できる数少ない企業の一つとなっています。