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株式会社工苑

油圧制御装置にアナログメーターが欠かせない理由

―― 石塚正純 様 ――

アナログメーターは物理的な流れを直接測定し、誤差が少ない

――工苑様がどのような会社か教えてください。

石塚:当社は1946年(昭和21年)に野見山一二が「工苑社」として創業し、長きにわたり、油圧のアンプをメインに営業してきました。その後、1973年(昭和48年)に野見山紘一に代替わりし、「株式会社工苑」として電子製品・電子回路の設計といった事業も展開するようになり、電子制御の会社として大きくなりました。その他に海外から輸入したコントローラー、サーボモーター用のドライバー、超音波モーターという半導体製造装置に使われている精密ステージ用のモーターなどを取り扱っています。

――なぜアナログメーターを必要とされているのでしょうか。

石塚:1970~80年代から油圧制御装置を製造しているのですが、お客様からは、油圧制御装置を見た瞬間、直感的に数値が分かるアナログメーターを付けてほしいというリクエストが多いんです。そのため、30年以上にわたり、弊社の制御装置の多くにはアナログメーターが付いています。

 また油圧アンプは、製鉄所や船舶など、様々な場所で使用されているのですが、制御装置が遠く離れていても、近くにある油圧アンプのアナログメーターを見て針が振れていれば正常に動いているかどうかが分かります。正常な作動を瞬時に確認することは、非常に重要です。

――なるほど。確かに、製鉄所は機械の大きさや設置状況を確認するのが大変な場合がありますね。 

石塚:LEDの7セグメント(数字表示に特化したデジタル表示モジュール)でもいいのですが、画面のちらつきが気になるのと電流がプラスなのかマイナスなのか瞬時に分からない。あと、動作中の値はすぐに変わるのでデジタル表示ですと数値が読み取りにくいんです。

――メーターの針ですと、直感的に分かります。

石塚:そうです。とは言っても、時代の流れで小型軽量化を目指したときに、省スペースタイプで縦型のエッジワイズ(メーターの針が示す値の変化を正確に読み取るために、視覚的なアシストを提供する機能)を採用した製品とアナログメーターを省いた製品を開発して、お客様に持っていったら「なんでアナログメーターがないんだ。メーターはオプションでもいいので付けてくれ」と怒られました(笑)

 アナログメーターの場合はアンプから動かしたい油圧バルブへの電流を実測していますよね。液晶表示や7セグメントは測定値をデジタルに変換しているじゃないですか。例えば、デジタル変換するICが壊れた場合、正しい数字は測定されていても表示が正しいかは分からないわけですよ。

――そうですね。逆に電流が流れていても表示しないケースがありそうです。

石塚:ええ。その点、アナログメーターは物理的に流れているものを測定しているので間違いが少ないんです。

――弊社のアナログメーターは新幹線や航空機といったシーンでも使用されているのですが、その位置付けは「予備」なんです。メインはデジタルであり、何かあったときの補助用にアナログメーターが付いています。

石塚:工場は殆どアナログですよね。ネットワーク化で集中管理をしても、必ず現場にある配電盤や制御盤にはアナログメーターが付いています。

扶桑計測器さんのアナログメーターは精度も高く、頑丈ですね

――弊社とお取引が始まったきっかけについて、改めてお伺いできますでしょうか。

石塚:20年間ぐらいアナログメーターを購入していた会社さんが廃業されることになり、御社をご紹介して頂いたのがきっかけですね。そのときは外磁メーターを購入していたのかな。

――ヨーク(磁石の吸着力を増幅する軟鉄でできた部品の外側にマグネットがあるタイプが外磁メーター、内側にあるのが内磁メーターというのですが、御社で購入されていたのは外磁メータータイプですね。扶桑計測器は外磁メーターが得意だったので、やらせて頂く事になりました。

石塚:驚いたのが扶桑計測器さんの作るアナログメーターは精度もさることながら頑丈ですよね。ほとんど壊れたことがありません。壊れないのは御社にとって困るかもしれませんが(笑)逆に質問なのですが、外磁メーターと内磁メーターの性能の違いは何ですか。

――やはり一番はパワーの強さですね。外磁メーターはマグネットが大きいので針の応答スピードが速くなります。測定器は外磁メーターの需要が多いんですよ。逆に早い動きを必要としない、一定で止まっている配電盤などは内磁メーターが向いています。メーターに占めるマグネットが小さくなる分、内磁メーターの方が安価にはなります。
利用シーンによっては、内磁メーターで十分な場合がありますので、利用シーンやコストの重要性に応じて、どちらがよいかご検討頂ければと思います。尚、扶桑計測器は内磁・外磁両方のメーターを取り扱っています。

アナログメーターがあれば、故障の判断が容易になります

――アナログメーターは油圧アンプでどのように活用されているのでしょうか。

石塚:電流を制御するアンプにはアナログメーターが付いており、流れる電流のプラス・マイナスの向きや量がどれくらいか一目でわかります。油圧装置には、このアンプとバルブがつながっています。もし油圧装置が停止した場合、どちらが壊れているのか判別が難しいですよね。このような事態は、油圧業界ではよくあるんですよ。バルブの交換は大変で、油が漏れ出す可能性もあり、非常に重労働です。バルブを交換しても、原因がバルブではなかった場合、がっかりするじゃないですか。

 アナログメーターがあれば、アンプに問題がないことが確認できて、原因はバルブにある可能性が高いです。逆に、アナログメーターの針が振れていない場合、アンプが怪しいかもしれません。アナログメーターの付いていない機械では、このような判断が簡単にできません。

――責任の切り分けが容易だってことですね。

石塚:ええ。バルブを取り外す作業が煩わしいため、とりあえずアンプに問題があると推測して、アンプを取り外して送り、検証すると故障していないケースが多いです。アナログメーターがあると、その判断が現場で可能となりますので、アナログメーターを装備することが望ましいです。

――ちなみに現在の油圧業界は、どのような状況なのでしょうか。

石塚:デジタル化が進んでいるのは否めません。制御装置は液晶画面やタッチパネルになっていて画面の中にアナログメーターが表示されているんですよ。

――液晶画面やタッチパネルでもアナログメーターの針表示は必要なんですね。

石塚:その通りですね。特に建設機械メーカーのお客様は、そのような機器に興味をお持ちのようです。アナログメーターの需要は確かに存在しますが、機器を取り付けるのではなく、タッチパネル内に統合する方が適しているという見解もありますね。

 例えば、工作機械には電動モーターが多く使用されてきました。それは油圧だと油の管理に悩まされる場面も多く、油の量が増えると消防法の規制も考慮しなければなりません。それでも、船舶の装置や自動車の試験装置、建設機械などで電動化が不可能な局面もあるため、この観点から見ると、依然として需要があると言えます。

――弊社のお客様にお聞きすると、海外では昨今デジタルの計測器・計器の比率が高くなってきているのに対し、日本はまだまだアナログのニーズが根強く、そのファンも多いようです。なぜ日本ではアナログが好まれるのでしょうか。

石塚:やはり、機械の専門家は実際に機械の動きを目で見ながら、ボリュームやトリマーで調整することが多いようです。デジタルでスピードを調整する際は、設定した後にオンにしないと、機械は動かないことがあります。それが、じれったいみたいな感覚はあるでしょうね。日本には根強いアナログファンがまだいると言っても、その多くは熟練の作業者たちだと思います。いずれ、彼らが退職し、若いデジタル世代が台頭する中で、アナログがどうなるか。個人的に興味深いですね。

最終的な信頼性はアナログメーターが保っていると思う

――油圧業界で活躍する工苑さんから見てアナログメーターの展望はどう見えていますか。

石塚:アナログメーターの表示をしたい場合、メーター本体を10個購入するよりタッチパネルで10個表示させた方が、コストやスペースの利用面から考えると、タッチパネルに分があります。ですが、デジタル処理は表示する際、プログラムなどの変換比率を誤って1アンペアが0.1アンペア違っても、または0.1アンペアが0.95になっていても気づかないわけですよね。アナログメーターの場合は製造時に調整すれば精度的には間違いない。計測機器としてアナログメーターを使用することは、誰が見てもベストな選択になるでしょう。

――コストより大切なことはなんでしょうか。

石塚:今でも、制御盤などでアナログメーターが幅広く使われている理由は、その信頼性にあります。ですが、頻繁に点検に行くのは手間がかかりますよね。そこで、現在はデジタル化によって、工場内や装置内の状態を制御室などで表示を切り替えて確認できるようにしています。異常がある場合には迅速に気づき、設備の担当者に報告し、実際のアナログメーターと比較することが可能なので最終的な信頼性はアナログメーターが保っているんじゃないかな。

 先ほど仰っていた航空機の話と同じでアナログメーターを見る必要がないのは幸せな時間なんですよ。何かあったときにどれを信頼するかっていうと、電流計や電圧計などのアナログメーターですね。

――信頼性第一の原発機械の装置も並んでいるのはアナログメーターですからね。本日は貴重なお話ありがとうございました。

石塚:こちらこそ、ありがとうございました。

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